我が国の安全保障の確保について 2014/5/10

研究委員 横山 恭三

―集団的自衛権行使容認と武器の使用制限緩和の必要性‐(要約)     

古来より、国家は合従連衡して自国の生き残りを図ってきた。 今日、各国は、国連の集団安全保障体制と同盟により、自国の安全を確保している。

ところが、我が国憲法下では、国連PKO参加部隊の武器使用の制限や集団的自衛権の行使(武力行使)が禁止されているため、国連加盟国あるいは同盟国としての義務が果たせないばかりか同盟国等からの信頼の確保が困難な場合がある。 このような事態は、我が国の安全保障・外交の方針である国際協調主義に基づく積極的な平和主義の推進及び日米安全保障体制の強化の障害となっている。

これらの問題を解決する方法には、憲法を改正するか、政府の憲法解釈を変更するかの2通りがあるが、政府の憲法解釈変更が現実な方法である。 集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である。 同盟の法的根拠も集団的自衛権である。

集団的自衛権を行使するかどうかは各国の自由である。そこで、集団的自衛権の濫用を防止するための2つの要件(攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言、攻撃を受けた国による他国に対する援助要請)が国際司法裁判所の判決で示されている。

一方、集団的自衛権の行使が各国の自由であるとするならば援助が受けられない恐れが生じる。 そこで、2つ以上の国が地域的取極を結ぶことにより、外部からの武力攻撃に対する相互援助を義務化することが行われる。 これが同盟である。同盟を締結する際に、条約に、相互援助義務が課される地域を定める場合と、定めない場合がある。現行の日米安全保障条約は前者である。

我が国政府の集団的自衛権に関する見解は「保有しているが行使できない」というものであり、そして、補給、輸送等の援助は「集団的自衛権の行使」ではないとされ、武力行使のみが「集団的自衛権の行使」とされている。 これは国際的な理解とは異なる。基地の提供、補給、輸送の援助も国際的には集団的自衛権の行使である。そもそも集団的自衛権を保有と行使で分けて議論しているのは日本だけである。

集団的自衛権の行使が禁止されていることによる問題の一つは、日本防衛のために行動する米軍に対して武器(弾薬を含む)や戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備などの役務の提供ができないことである。 寸秒を争う航空作戦においては、航空機への武器の搭載、給油、整備の適否が作戦の成否を左右する。

もう一つの問題は、武力行使を前提として編成された国連多国籍軍・有志連合に参加できないばかりかそれらの部隊に対する援助についても制約があることである。 そのため、我が国は、その都度、自衛隊法に基づき又は特別措置法に基づき自衛隊を海外に派遣し、国連多国籍軍・有志連合に対して武力行使と一体化しない後方支援を行っている。 この状態は、湾岸危機の際、日本が莫大な資金的貢献をしたにもかかわらず、外国から感謝されなかったといういわゆる「湾岸ショック」により日本は政策の大転換を図ろうとしたわけであるが、未だ一国平和主義から脱却していないことを示している。

また、前述の「湾岸ショック」をきっかけに、我が国は国際平和協力法を制定し、積極的に国連平和維持活動に参加するようになった。 しかし、自衛隊の「武力の行使」や「武器の使用」には、憲法上の判断から厳しい制約が設けられている。このため、国連PKOに参加した自衛隊には、誘拐された国連職員や邦人等を救出すケースあるいは襲撃された他国部隊を救援するケースにおける武器の使用が認められていない。 このため、現場の指揮官は、仲間を見捨てない(Camaraderie)という人間共通の倫理を果たすことができないという苦悩を抱えている。 集団的自衛権の行使を容認するかしないかは、国民一人ひとりが日本をどのような国にしたいかという思いにより意見が異なるであろう。 ある人はふつうの国にしたいと言い、また、ある人は戦争をしない国にしたいという。その違いは、各自の歴史観、人生観により生ずるものであろう。 我々は、隣国にうとまれ歴史上から消えていったカルタゴの歴史を想起しなければならない。その歴史は我が国にとって米国との強固な信頼関係の保持の重要性を示している。

今、国会やマスコミで集団的自衛権の行使容認について議論されているが、大切なことは日本が国際社会において孤立しないことであり、そのためには、集団的自衛権を行使できる国家となり、日米同盟を強固なものとすることである。

本文はこちら ●我が国の安全保障の確保について-集団的自衛権行使容認と武器の使用制限緩和の必要性- (PDF)

    

北朝鮮、加速する変化の実体 2012/2/29

研究委員 西村 金一

北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記が昨年末突然死去した。'08年夏ごろに脳梗塞で倒れ、後継者問題とともに北朝鮮の政権や国内の不安定化について注目が集まっていた最中だった。      加えて、金総書記が死去したことで、「近い将来、北朝鮮内部に大きな変化が現れる」ということが現実味を帯びてきた。

-政権内部に重大な変化が数年前から始まっていた-

実際には、金総書記が脳梗塞で倒れた'08年から変化は始まっていた。 軍の総参謀長李英鎬(リヨンホ)次帥と妹婿の張成沢(チャンソンテク)氏2人とその関係者が、党の実務を担当する党書記局および軍の最高指導機関である中央軍事委員会の要職を占め、軍部隊と秘密警察・警察機構を掌握した。 '10年には、2人を代表する派閥が主導権を握ったと言える。だが、党内長老や人民武力部が対抗勢力として存在しているのも事実である。

-政権内にどのような対立の構図があるか-

政権内部構造、縁戚関係、指揮系統上の繋がりおよび人事的な不満などから3つの対立構図が浮かび上がってくる。 一つ目は、最高人民会議・内閣・党の長老からなる非軍派(元老派)である。彼らは軍事力・警察力の後ろ盾がない。二つ目は、人民武力部・軍総政治局(軍内部の党の組織)等からなる軍政派である。軍内で根強い支援基盤を所有しているが、軍部隊を押さえる統制力に陰りが見えている。 三つ目は、李総参謀長(軍部隊のトップ)・張氏(秘密警察を掌握)・金敬姫(キム・ギョンフィ)政治局委員(金総書記の妹)など正恩氏との縁戚関係にある後見人派閥である。書記局・中央軍事委員会において圧倒的多数を占めること、軍部隊である各軍団・特殊部隊・海空軍および秘密警察の後ろ盾があること、李総参謀長が金永春人民武力部長を抑えて軍のトップについていること、金総書記の後継者の後見人としての正当性を有していることから力関係は最も強い立場にある。

当面は、非軍派の意見を尊重し3派がまとまり集団指導体制として機能するが、近い将来にはポスト争いなどから意見が対立し、後見人派と軍政派が対立するであろう。 秘密警察や軍特殊部隊を使用した暗殺も予想される。

-政権内対立に連動して軍内部の対立・国内混乱に拡大するか-

軍部隊指揮官達と李総参謀長は指揮系統上の上下関係にあり、また彼らは中央軍事委員会の副委員長と委員に抜てきされるなど密接な関係にある。 そのため、そのほとんどが後見人派に従うものと思われる。 がしかし軍内部の党組織である総政治局が軍政派であることと、優遇された者の陰で降格された軍人や老齢の理由により引退させられた将軍などの不満が少なくないことから、金人民武力部長と結び付きのある軍部隊が軍政派に付き、軍内部の対立に発展することも十分予想される。

-人民軍の軍事力と作戦戦術の重大な変化が生じている-

北朝鮮軍の通常戦力は、韓国軍と比較をすると約1.4倍である。 この戦力差では、奇策をもって戦わない限り勝利することは難しい。 また、航空・海上優勢をみた場合は、米韓軍が圧倒的に有利である。

そのため北朝鮮軍は近年、①携帯対空ミサイル約6,000基を導入し、攻撃時の航空劣勢を補っている、③韓国内に潜入した特殊部隊が、低空で飛行する作戦機を携帯対空ミサイルで撃破する、④長射程の艦対艦ミサイルを搭載した小型艦艇数隻で大型艦1隻を狙うゲリラ的攻撃を行う、⑤小型潜水艦等が潜行したまま米軍艦艇に接近し魚雷を発射して撃沈する、などの劣勢を勝機に変える戦法を考案している。 この戦法を奇襲により実行すれば、一時的に勝利することは可能であろう。

弾道ミサイルについて、今最も懸念されるのは、米国本土まで届く大陸間弾道ミサイルを発射できる東倉里発射実験基地の完成が近づいていることだ。

-人民軍の動向は危機的なレベルに達している-

朝鮮戦争以降、危機のレベルが高かったのは、北朝鮮特殊部隊が韓国大統領府青瓦台を襲撃、ラングーン爆破テロ事件の時期であった。 そして近年、韓国哨戒艇「天安」への魚雷攻撃や延坪島への砲撃が行われた。 偶発的事故や北朝鮮ではないと言い逃れができない、周到に準備され被害が多数発生した軍事攻撃は、朝鮮半島では過去に例がない。 今は、「朝鮮半島の危機レベルにある」と判断すべき状況にある。

最後に、数年前に始まった北朝鮮国内の変化は、金総書記の死去により加速することはあっても停止することはない。 北朝鮮国内は当分の間、安定状態が維持されるが、徐々に、軍政派やこれらに同調する軍部隊との対立が深まり、国内の統制力が弱まり、加えて、情報流入が国内の危機的経済や不満が高まっている社会に火が付けば、国内混乱に発展する可能性もある。 さらに、人民軍が米韓軍を相手にして戦える戦法を考案していることや、朝鮮半島の危機的レベルが高いことで、小さなトラブルがトリガーとなって武力紛争へ移行する恐れも十分にある。

北朝鮮ポスト

国難への対処を考え直すとき  2011/6/1

理事長 上田 愛彦

3月11日突如発生した未曾有の巨大地震とこれに続く大津波により、被災された数多くの方々には心からお見舞い申し上げます。

しかし同時に同じ原因で被災し、今尚先行きが見えない福島第1原子力発電所の事故では、現在報道されている事柄だけ見ても明らかに最悪の事態を甘く見続けてきた人災部分が多いのではないか。 東京電力だけをせめる前に国家としてこの重大なる国難を平素から認識する方法、組織、そして発生後いち早く決断し、必要なことを超法律的にでも実行してゆく態勢にはないことが問題ではないのか。 つまり日本人の国難への対処が今、世界の注目する中で厳しくも問われ、場合によっては単に経済的餌食となってしまう危機的状況にある。それが3ヶ月経っても会議ばかり開いて明確な方向が出ないこと自体、最大の国難ととらえるべきではなからろうか。

今、国家としてこの災害、この原発事故を非常事態として考えていないとしたら一体国家とは何なのか、自衛隊を10万人出せば事がすむのか、地方にだけまかせてすべて克服できると考えているのか。これを契機に次に来る国難にどう対処するのか、教訓はいくらでもある。

①原発事故に限らず平素から国家レベルでの最悪事態をとことん考えておくことは非常事態対処の基本である。 しかし、これをどういうメンバーで考えるかが問題であり、内容が分らないからとて現にその事業を行っている者、あるいはその利害関係にある者を集めて審議しても本質的な最悪事態が出てくる筈がない。理論として考えるだけでは不十分であり、また現存の法律面からだけでは最悪の事態を予測することは到底不可能である。 すなはち原発なら原発と利害関係のない第3者(複数)に原発の最悪事態を創造的に討議させて導くべきであるが、第3者は往々にして原発に関する知識、現場経験もなく、独自に考え出すことができないので関係者を1/3程度メンバーに入れる必要がある。 こうしたメンバーの構成には単に法律面での管理者のみならず科学技術的素養をもち、しかも奇想天外とも言える発想力に富んだ人物の存在が重要となるが、通常こうしたうるさい人間はメンバーから排除されているのが世の常であり、御用メンバーで当たりさわりのない結論を出すくらいならやらない方がよい。 これをチェックできる第4者が必要となることもあろう。

②非常事態が発生してから速やかにやるべきことを決断し、少しくらいはずれて法律的に定めがなくとも必要なことは実行し、修正してゆく度量をもつリーダーの存在が重要である。 これらが人気取りや政争の具とされるに至っては国民を愚弄するにも程がある。 そもそも政治家、閣僚はすべて国民に対し、選ばれた公僕であることを認識し、常に国家を代表し、国家のために全力を傾注すべきことは当然であり、国難にあたってはこれらが際立って本質的に国民に理解されるべき機会でもある。 総選挙とは正にこの点がポイントである。 米国の連邦危機管理庁(FEMA)では大災害に際し、当該地区にどういう段階区分で連邦政府からの財政を含む支援を行うかを大統領が15分以内に決定し、州政府に通知すると聞く。 日本ではそうした制度はないが今回の災害に際し多くのボランティアが自発的に被災地を訪れ自主的支援が行なわれた。 一例として、やる気になれば政府として1万人位の緊急支援隊を全国から集め、救援活動をもっと迅速、有効に行うことができたのではないか。 そういうところに頭が廻らないということは、そもそも普段から何も考えていないということではないか。

    

東京電力福島第1原子力発電所事故の教訓  2011/6/1

研究委員 大島 紘二

東京電力福島第1原子力発電所事故は、未だどのようにして終息するか先が見えないが、原子炉の技術的な側面は専門家に任せるとして、5月末日までに明らかになった危機管理的な側面からの教訓は、大きく分けて4項目ある。

その第一は、原子力関係者に「我が国の原子炉は軽水炉であり、チェルノブイリ原子炉のような事故は起こりえない」という誤算があったことである。 臨界連鎖反応が起きていないことは確かであるが、スリーマイル島原子力発電所事故の事故以上のメルトダウン状態となり、環境へ膨大な放射性物質を放出している。 これまでに多数の原子力関係者に会ったが、彼ら全員が言うことは、多数の事故防止手段を並列に準備しているので安全であるとのことであった。 しかし、その並列になった多数の事故防止手段は、すべてが電源と直列につながっていたことに誤算がある。 防災基本計画の原子力災害対策編では、その前文で「たとえ不測の事態が発生した場合であっても対処し得るよう柔軟な体制を整備するものとする」となっており、人間がつくった機械である以上必ず事故が発生するとの考え方をすべきものと思う。

第二は、汚染情報に客観性がなかったことである。 私達は汚染情報に客観性を持たせるために、地方自治体にも独自の汚染情報システムを持つべきだと考え、ガンマ線測定器と無線LANとを使った汚染情報システムを考えたことがある。 スリーマイル島原子力発電所のあるペンシルバニア州にはペンシルバニア危機管理機関(PEMA)に独自の汚染情報システムを持っており、汚染を常時監視している。 こうしたシステムがあれば、地方自治体に情報が来ないというイライラが解決される。 100億円もかけたSPEEDIシステム情報が、肝心の時期には隠匿されたことは非常に残念である。 客観的な情報がなければ、避難を呼びかけても住民の強力が得られないのは当然である。

第三は、原子力発電所立地に関する危機管理の不備が露呈したことである。 我が国の原子力発電所はすべて沿岸に立地しており、しかも特定地域に集中している。 これには非常に大きなリスクがある。沿岸は海からのゲリラ攻撃に非常に脆く、原子炉本体は強固にできているとしても、周辺設備はそれほど強固でない。 さらに、特定地域に集中していると、格好の攻撃目標となる。

第四に、原子力発電所は電子的に制御されていて、サイバー攻撃に対して脆い。 SPEEDIシステムは、全国的なネットワークを構成している。これは裏返せば、サイバー攻撃の侵入点が多いことを意味する。

今後、教訓事項が次第に明らかとなるだろうが、急に原子力発電を中止することはできないから、原子力発電が続く限りにおいて、こうした教訓を活用して欲しいものである。

我が国周辺の対中軍事環境の劇的変化  2010/12/1

研究委員 五味睦佳

周知のとおり、最近の中国の経済力、軍事力の増強は目を見張るものがある。経済力については、米国国家情報会議(NIC)によれば、中国は2025年までに世界第2の経済大国になると予想し、日本の内閣府でも2030年には米国を抜き、世界のGDPの23%(米国は17%)を占めると予想している。 軍事力についても、公表国防費の規模は過去5年間で5倍以上、過去20年間で約18倍と驚異的な増強で、7月28日米国議会調査局は、中国は2015年から5年間で6万トンから7万トンの空母を6隻建造すると報告している。 空母のみならず、対衛星兵器、電子戦、サイバー戦、統合防空システム、弾道、巡航ミサイル、高性能戦闘爆撃機、UAV,潜水艦、機雷戦等の総合的分野での増強は西太平洋の軍事バランスを中国優位にしつつある。

    他方リーマンブラザーの破綻、イラク、アフガンの戦費の増大等による米国の経済力・軍事力の低下は著しい。 米海軍も建艦計画に苦しんでおり、質的に落として数を確保したとしても2025年ごろには現在の280から230程度に減少するのではないかと懸念されている。 更に劇的な変化は米国が戦後60年間絶対的な軍事的優位の根幹としてきた空母からの陸上への戦力投射作戦が、中国の空母攻撃用中距離弾道弾ミサイルDF-21Dが早晩実戦配備されることにより著しく制約されることである。 すなわちこのミサイルが存在する限り、空母は作戦海域に近づくことは極めて困難となり、緒戦において対中国作戦の主役からはずされ、脇役となることになる。 周知のように米国はロシアとの中距離核兵器制限条約により、射程500kmから5500kmの弾道ミサイルは保有できない。 空母が中国の沿岸に近接し、これらの中距離ミサイルを無力化することが出来た時期は、それほどの脅威ではなかった。 しかし緒戦において空母の機動打撃力が期待できない状況では、中国の陸上攻撃用を含むこれら中距離弾道ミサイルは、嘉手納、岩国、横須賀さらにはグアム等に前方展開している米軍基地への重大な脅威となる。 このような深刻な状況に鑑み、ゲーツ長官は今年5月3日海軍協会で空母を中心とする海軍戦略を見直すとともに、空軍と海軍が協力し、革新的な統合作戦[Joint Air-Sea Battle Concept]を策定することの必要性を説いた。

これを受けて、海軍作戦部長及び空軍参謀長は現在これの作業を実施している。先般著名なシンクタンクCSBAはこれのたたき台として[AirSea Battle]を発刊した。 これは対中国の作戦計画ではなくて、緒戦における空母の有用性が減少し、戦略バランスが著しく中国優位に傾くのを、空軍と海軍が密接に協力することにより、いかに相殺(Off Set)し、バランスを保ち、中国との紛争を抑止することにあるとしている。 抑止に失敗した場合、これが有効に機能するためには、緒戦において、前方展開の米軍は中国の中距離弾道ミサイルの攻撃に耐えてこれを凌ぎ、反撃に転じるが、そのためには、基地の分散・抗堪化等日本の同盟国としての協力支援が必要不可欠としている。 前方展開の米軍の先制攻撃に対する脆弱性は劇的に増加しつつある。

日本が今のような腰の定まらないいい加減な対応をしているならば、西太平洋の軍事バランスは中国優位に展開し、やがて米国は西太平洋から、撤退することになり、日米同盟の解消、日本の中国の属国化という悪夢が現実のものとなる。 今回の尖閣諸島問題を契機に、我が国の安全保障論議を更に実のあるものにしなければならない。

米国海軍 ジョージ・ワシントン

中国海軍 空母

増大するサイバー脅威に備えよ  2010/12/1

研究参与 伊東 寛

最近、原因不明のシステム故障が多発している。鉄道の突然のダイヤの乱れや、航空管制システムのシステム故障、そのほかにもあまり公表はされてはいないが、産業界において各種のシステムトラブルが発生している。

もちろん、社会でコンピューターやネットワークを使用する機会が加速度的に増えているのだからこれらの障害は予期されていたと言うことも可能である。が、果たしてすべてがそうなのであろうか。

かつて、冷戦時代に「東京急行」というものがあった。ソビエト連邦の航空機が定期的に南下してきて東京付近でUターンして帰っていく事象であるが、この行動の目的は、わが国の防空体制の調査、特に対空監視レーダー等の技術諸元の収集であったと考えられる。こうして平時の間に収集されたデータはやがて有事の際に日本のレーダーに対するジャミングをかけるための基礎資料として使われる予定であったと考えられる。

こうして考えると、現在、日本の各地で発生しているシステム故障・障害のいくつかは某国(特にロシアをさしているわけではない)が行っているサイバー上の東京急行の可能性があるのではないかと危惧するところである。

現在、これらのシステム故障に関して、その実態は十分に公表されていない。まず、現場レベルでウイルスに感染したということを上に報告すると怒られるのではないかという人間的な事情があり、次に、その報告がトップまでいったとしても、会社のシステムがハッカーに侵入されていたと公表することは会社の信用度を落とし株価に影響を与えるかもしれないと、トップがそれを伏せようとする体質もあるかもしれない。

こうして、貴重な被害情報が広く共有されないために、社会に危機感が醸成されることもなく、積極的な対策も採られていないというのが現状であったとしたら、それは寒心すべきことと言わねばならない。

従って、今後の政府が取るべき具体的な方策のひとつとして、これらのサイバー事故・障害をしかるべきところに届け出る仕組みが必要であると考える。つまり、これらの事故や障害等をサイバー上の法定伝染病に指定するということである。あわせて、サイバー関連の法律をさらに整備していく必要もあろう。たとえて言えば、それらはサイバー建築基準法であり、サイバー道路交通法と呼ぶようなものになるはずである。

今後、国民すべてが広く危機感を共有し、一日も早く必要な法律整備がなされることを願ってやまない。

過去20年の研究活動を回顧して  2010/12/1

研究委員  高山雅司

 DRCは創設以来20年を越えた。この間、法人改革、資金調達等多くの難問に直面したが、創設者である上田愛彦会長の長年にわたる献身的な努力と積極的で前向きの姿勢が、これらを乗り越え現在も活動を継続でき、研究員の数も増えている。国際安全保障データ、中国・朝鮮半島・ドクトリン等については定期的・継続的な研究が続いている。防衛省、外務省、経済産業省等からの委託研究は毎年10件近くあり、これらの成果及びデータの蓄積は貴重な財産である。外国の研究機関、特に米国のパイパー研究所、ハワイのアジア太平洋安全保障研究所、韓国の21世紀軍事問題研究所等との定期研究交流は特筆されるものである。陸上自衛隊幹部学校高級課程学生、自衛隊からの研修生、一般大学生有志の教育、防衛省の懸賞論文への協力などの幅広い業務が挙げられる。また防衛に関する多数の著作を出版してきた。この20年間の幅広い確実な成果と信頼される実績は貴重である。

 日本の安全保障と防衛政策があるべき姿から大きくかけ離れていると認識し、それを他国との比較であるべき姿を探求し改善に協力する目的がある。旧軍の世代の人ができなかったことを我々の世代でやろうとの考えは意気投合できた。まずは外国の特に米国の現状から勉強し、教訓・知恵を取り出し、それに今までの我々の知識と経験で論陣を張ってきた。100回を越える海外研究の結果得られた知識と体験は貴重なものである。特にミサイル防衛についてDRCは早くから注目し、防衛省が動く前から米国のミサイル防衛庁を毎年のように訪問し連携を深め防衛庁をはじめ関係機関にその実情と重要性について年報や会誌で議論を展開した。北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの脅威が増大する中で、その必要性が日本政府にも認められ、現在、海上自衛隊のイージス護衛艦がすべてミサイル防衛能力を装備し航空自衛隊のペトリオットPAC3の装備が逐次進められ日本のミサイル防衛能力が現実のものとなりわが国の抑止力を高めていることは1992年頃からの我々の主張が実現したことを意味し、このことは嬉しいと同時に誇りに思う。

 私も自衛隊退職後、DRC研究委員として海外調査に参加し、米英独仏露中韓台湾など20数カ国を訪問しその国の防衛関係者と意見を交換する貴重な機会を得ることができた。今までの研究の結論は日本の防衛態勢はまだまだ不十分であり、やるべきことが多くあることである。初めは齢70代には終わると思われた研究作業もまだまだ継続できそうである。外国に行くと、中露を除けば日本の評判はよく日本に期待していることを実感した。今後も日本のために世界の平和のために、後に続く後輩のために何らかの貢献ができるような研究成果をあげたいと願っている。